サステイナブル経営総合研究所の設立にあたり、ステークホルダーの方々から寄せられたメッセージを紹介します(五十音順)。

石川 雅紀さん
(神戸大学大学院経済学研究科教授、工学博士、特定非営利法人ごみじゃぱん代表理事、公益財団日本容器包装リサイクル協会評議員、環境経済・政策学会理事、日本包装学会顧問、環境省、経済産業省、農林水産省、文部科学省、神戸市等の審議会、委員会委員)

サステイナブル経営総合研究所 発足に当たって

多田さんのお名前を最初に聞いたのは、共通の友人から「ソニーは、とんでもなく変な会社である、何しろ、若手の部長が堂々とNPOを作って共同代表として活動している」と聞いたときです(いい意味ですよ、誤解されないように)。この友人は、何かの審議会で多田さんと同席して、その元気者ぶりとスマートさに深く感銘したとのことでした。

その後、直接お会いして、友人が言っていたことがその通りだと感じました。その時以来、別な友人と開催しているセミクローズドの合宿討論会(ヒューマン・フロンティア・フォーラム:HFF)にお呼びし、以降毎年、2泊3日の熱い討論の中核メンバーとしてお世話になっています。

また、神戸大学では、全学でESDコースを開講しており、経済学部では「社会コミュニケーション入門」という授業を提供しています。テーマは、社会課題をコミュニケーションで解決することです。HFFの仲間を中心として、社会課題解決のフロンティアで活躍されている方々に自身のご経験をコミュニケーションの視点から、オムニバス講義をお願いしています。多田さんには、この講義で最も重要な、全体を俯瞰する視点からの講義を毎年お願いしています。多くの学生にとって持続可能性を俯瞰する機会はあまりないらしく、コミュニケーションペイパーを読むと多田さんのメッセージを深いレベルで受けとめている学生が少なくありません。

世界に5千本を超える優れた記事を発信してきたジャパン・フォー・サステナビリティが活動を休止したことは誠に残念ですが、私は、この機会に多田さんが次のステージに登られると思います。多田さんが書かれている「環境、CSR、SDGsは、イノベーションの原動力である。」という信念は、私も深く共有するところですので、これまではお世話になりっぱなしですが、何か一緒にできないか、私で役に立つことがあれば何でもやらせていただきたいと思っています。

枝廣 淳子さん(幸せ経済社会研究所所長)

メッセージ

サステイナブル経営総合研究所の設立、おめでとうございます。

「がんばっている日本を世界はまだ知らない」というキャッチフレーズの下、2002年8月26日に枝廣・多田を共同代表として立ち上げたNGO:ジャパン・フォー・サステナビリティは2018年7月をもって、活動を休止しました。

この度、新しい組織のもとで、サステナビリティへの取り組みが広がっていくよう取り組みに期待しております。

小田 理一郎さん
(有限会社チェンジ・エージェント 代表取締役)

メッセージ

サステイナブル経営総合研究所設立おめでとうございます。

多田さんは、1990年代電機メーカーにおいて環境マネジメントの要職につき、社内のみならず国内外で広く人脈をもって、日本のCSR黎明期における思想確立から企業での実践まで幅広く活躍しました。

2002年日本の環境活動を世界に英語で発信するNGO「ジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)」を共同設立します。私もこのNGOに合流し、以来多田さんとは16年にわたってNGOやプロジェクトの運営でご一緒しました。

多田さんは、JFSのミッションの一つである、「より持続可能な日本に向けて」活動する中で、企業の環境・CSRレポートなどのディレクションや報告デザインについて、数多くの環境先進企業へのアドバイスを通じて、日本における非財務報告の基盤作りに貢献しました。

多田さんが仮説に掲げる「環境、CSR、SDGsは、イノベーションの原動力である」は、私は真であると信じています。これらを制約要因として捉えるのではなく、むしろイノベーションの起点として取り組むことによって、社員のマインドセットが変わり、戦略の自由度とクリエイティビティを高めることにつながると考えます。

多田博之さんの長年にわたる経験で培われた知見、洞察、人脈が、これからの日本のCSR経営やSDGsの推進の文脈においてインパクトを与えることを期待しています。

唐沢 敬さん(国際研究インスティチュート代表、立命館大学名誉教授・経済学博士)

「サステイナブル経営総合研究所」設立に寄せて

「国連ミレニアム開発目標」(MDGs)が2015年に終了したのを受けて、新たな持続可能な開発の指針となる「持続可能な開発目標」(SDGs)が定められて今年で3年目です。国連は17のグローバルな目標と169の達成基準を設けて加盟各国政府・国民に呼びかけていますが目標達成は容易ではありません。とくに、米トランプ政権による地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」からの離脱宣言や各国の利害や意見の対立から持続可能な開発をめぐる話し合いにブレーキがかかり、国際協力の足並みが揃わないためです。

こうした中、「Japan for Sustainability」(JFS)共同代表・理事長として、長年、環境保全や持続可能な開発問題に取り組んでこられた多田博之氏のイニシアティブにより「サステイナブル経営総合研究所」が設立されたことは大変時宜を得ており、心からの支持と激励の挨拶を送ります。同研究所は、持続可能性の深堀に始まり、企業・自治体等の経営環境、CSR経営、日本独自の長寿企業等の事例取集や研究を中心に6項目の斬新な目標を掲げています。国内外で企業のCSR問題が経営の課題として取り組まれてすでに久しいですが、いずれも計画通りの成果をあげるまでには至っていません。企業活動そのものが世界経済や各国の国民生活の動向に左右されざるを得ないためです。

「サステイナブル経営総合研究所」は、こうした内外の経験を踏まえ、単なる情報発信に止まらず、企業、自治体、NGO/NPO等への支援業務としていくつかの新しい試みを提起しています。環境経営、CSR経営導入に始まりSDGs導入・実行サポート、イノベーション経営移行への支援等多彩なプログラムが組まれています。

IOT、AI、ビッグデータ等の本格化で新たなIT時代が始まっています。企業も国民もこの大きな流れの中で自己を変革し、新しい地平を開拓していかなくてはなりません。「サステイナブル経営総合研究所」の新たな試み、その役割と成功に心から期待しております。

河口 眞理子さん(大和総研勤務、NPO法人日本サステナブル投資フォーラム共同代表理事、(社)グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン理事、(公財)プラン・ジャパン・インターナショナル評議員、(公財)WWF評議委員:2018年9月から)

メッセージ

2003年が日本におけるCSR元年といわれます。思い起こせば、それはソニーに初めてCSR担当部署が設置された年でした。ソニーは、それに先立つ90年代後半に環境経営という言葉が生まれたころから、日本の環境経営の牽引役でした。そしてそのエンジンが多田さんでした。CSRはコンプライアンスあるいは社会貢献活動と見なされがちだった状況下で、非常に戦略的またユニークな視点で、ビジネス的観点からも面白い様々なCSRプロジェクトを生み出してく能力には舌を巻いたものです。全体を俯瞰する力、異なるプレーヤーや取り組みを組み合わせ、今までなかった価値を生み出す力を持つCSRのリーダーは日本では数えるほどでした。

それから15年。SRI投資がESG投資となり、SDGsが中長期戦略の要件となる状況下。還元主義的に細部を分析するのではなく、全体像と、他のステークホルダーと関係を俯瞰しながら、異なるステークホルダーを結びつつ新たな価値を生み出していく能力と活力が求められています。一方で、パリ協定の目標を達成するために脱炭素は待ったなしですし、SDGsも2030年目標とはいえあと12年しかありません。あらゆるセクターが活動を加速させなければなりません。まさに多田さんが活躍する舞台が整ったのです。ご活躍を祈念しております。

仙石 太郎さん(富士ゼロックス株式会社 価値創造コンサルティング部 部長)

メッセージ

多田博之さんとは2003年頃から15年ほどのお付き合いとなります。40歳そこそこの若さでソニーの環境戦略をつくり、CSRの追求こそが品格を持った企業経営の実現であると同時に、そのことが経済的な成功を包含した企業価値向上と相反するものではないことを一貫して主張されてきました。CSRと経営品質、知識経営をつないでみせた実践型のリーダーでもあります。

ESG投資やSDGsを見るまでもなく、長期的な構想とぶれることのない信念を持って行動する企業が市場の支持を集めていますが、残念ながらそのような経営者ばかりとは限りません。また頭で理解をしていても、実際に行動するとなると様々な困難や矛盾が伴い、サステナブル経営を実現することは容易なことではありません。

多田さんの長年に渡るサステナビリティ研究、そして企業指導の経験は、経営者のみならず実践リーダー層の方々、さらには官公庁組織やNPO、学校に至るまで貴重な示唆となるに違いありません。


ピーター D. ピーダーセンさん
(リーダーシップ・アカデミーTACL代表
一般社団法人NELIS代表理事)

メッセージ

「サステナビリティはイノベーションの原動力」でなければならないという、サステイナブル経営総合研究所の趣旨には、100%賛同します。多田さんとは、彼がソニーの社会環境部でリーダーシップを発揮していた1999年時から、約20年にわたりお付き合いです。一貫して、環境経営やサステナブルな世の中の実現にご尽力されたその姿勢に大いに共感するとともに、これからのサステイナブル経営総合研究所の活動に期待しております。多田さんは、非常に謙虚で人を思いやる心の持ち主であると同時に、サステナビリティに対しては並々ならず覚悟や情熱と、長年の経験に裏付けられた洞察力があります。多くのシーンでその力が発揮されることを願っています。

水口 剛さん(高崎経済大学 経済学部教授)

多田さんの活躍に期待しています!

世界中で極端な洪水や熱波が頻発しています。長年警告されてきた気候変動の脅威がいよいよ誰の目にも明らかになってきました。他方で、自国優先主義や移民を排斥する傾向が強まり、寛容さが失われつつあるように見えます。その背景には、経済的な格差の広がりと社会への不満の高まりがあるのでしょう。サステナビリティという言葉が、これほど切実に響く時代はかつてなかったのではないでしょうか。

この大変なときに、古くからの友人である多田さんがサステイナブル経営総合研究所を立ち上げると聞き、心強く思います。今直面する課題は経済と経営のあり方に起因するものですから、そこを変えない限り、根本的な解決はできません。大手企業のCSR部門とNPOの両方を経験してきた多田さんなら、この困難な課題に取り組むのにうってつけです。きっとサステナブル社会に向けて企業と社会をリードできるものと信じています。頑張ってください。