年賀状考
昨年の暮れに、一通のこんな葉書が、ある会社から舞い込みました。
「SDGsのため、来年から年賀状の送付を廃止させて頂きます。」
これを読んだとき、私は何とも言えない違和感を覚えました。
人によって出す出さないは全くの自由ですが、年賀状は日本の一つの文化です。
昨今の日本の風潮を見ていると、何でもSDGsに結び付けてしまうように思えてなりません。
これは、いわゆるSDGsウオッシュ(似非SDGs)の典型ではないでしょうか。
正直に、コスト削減のためと言えばいいのにと感じてしまいました。
ところで、みなさんは、国民の86%が「SDGsを知っている」という国を知っていますか。
これはある広告会社のリサーチ結果によるものです。
フィンランド? スウェーデン? デンマーク? ドイツ? フランス?
様々なSDGs(環境)先進国が思い浮かぶかと思います。
けれども、どれも不正解です。
正解は、わが国日本!なのです。
人口1億人を越える国で、これは驚異的な認知度と言えるでしょう。
ところで一方、国連関係機関によるSDGs進捗国別ランキングというものがあります。
認知度世界1の日本の順位を想像できますか?
実は日本は総合18位に呻吟しているのが最新の2024年の調査結果です。
2016年の初回調査以来、毎年じりじりと順位を落とし続け、それでも前年2023年の
21位から、ランクが3つ程上がって、この位置にいるのです。
順位の元となる評価の詳細は敢えてここでは記しません。
しかし、認知度と進捗度とのこのギャップを、みなさんはどう考えるでしょうか。
SDGsの本質は2つ。
「誰ひとり、とり残さないこと。= Noone left behind. 」
「大胆な大変革を起こすこと。=Transformation 」
残念ながら、日本では、この本質が理解されていないか実践されていないと
私は思うのです。些細な小手先だけの行為をすべてSDGsとつなげて、
それで自己満足してしまって、終わりにしている。そんな事例が多過ぎます。
社会の格差は拡がるばかりで、SNSによる誹謗中傷も後を絶たず、先日も
痛ましい事故がありました。
行政にしても企業にしても、「大変革」という名前に価する改革を未だ
見たことがありません。
このままでは、日本はますますSDGs(環境)後進国となって、世界から
置いてきぼりをくってしまう、もったいないなあ、そんな風に思わせる、
一通のお便りでした。
多田博之